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最近よく落ちてるもの

「んー…こっちの方でいいんだよな?」

テオの元に、久しぶりの冒険の誘いがあった。
「いつもの」ダンジョンかと思ったが、今日は少し勝手が違うらしい。

「ま、いっか、行けばわかるだろうし。道、これであってるか?」

そんなわけでいつもと違う道を走っていたが、視界の隅に引っかかるものを感じて立ち止まる。

普段あまり通らない道に。
すごく見慣れた物体が。

「あーあ…また落ちてるよ…」

黒っぽい人型の物体を見下ろしながら、ひとつ、ため息をつく。
倒れている人物から周辺に散らばったガラスの破片に至るまで、彼にはとても馴染みのある風景。
「ジンが倒れてるってことは、この先にセニアがいるってことだからなあ…」
どうやら、方向はまちがってはいなかったらしい。

「道があってるのはよかったんだけど、これ、どうするかなー」

このストーカーに対する仲間の忍者の反応は、話題に出しただけでえらい剣幕でにらまれるほど最悪なものだった。
(姉さんもアレにはたじろいだぐらいだし、マジで怖えぇよな、ジンが絡んだときのセニアは)
助けたら助けたで面倒なことになるが、放っておくのも寝覚めが悪い。
よく懲りないな、などとつぶやきつつ、《復活》の魔法を発動させる。
【眠り】状態ならすぐに起き上がって追いかけてくることもないだろう。

結果、倒れている侍に中途半端な処置をほどこして、テオは目的地へ急ぐことにした。



「ダンジョンに入らないで…アイテム交換?」
今日のクエストは、目的のアイテムをそろえること。
いつもと違うのは、ダンジョンに入らずともトレードでなんとかなるという点。
アイテムを交換していって、目的のものを手に入れていくのだ。
冒険者達は交換相手を探して街中を歩くわけで……

(ごめん、セニア。運が悪かったら目を覚ましたジンと鉢合わせだ)
(戦闘しなくていいのは、いいんだけどな、今日は間が悪かったよな…)

致命的に覇気に欠けるレベル10の騎士は、心の中で仲間に謝り倒すのだった。


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