TOPへメニューへ


ツヅキカラ〜第5章〜

ジョードはゴミ箱……シセルの目の前に、メモを差し出した。どうやらこれが、次の手を打つための鍵となるらしい。
リンネから電話が来る前、彼が見ていたものだ。

「このデンワ番号の先に行ってもらえるかな。…カバネラ警部が言うには“ラブリーな連絡先”だそうだ」
(“ラブリーな連絡先”…か。大丈夫なのか、それは…)

カバネラが何かを“ラブリー”と表現する時。それは大抵、厄介ごとが起こる前か起こった後だ。

「オレのシゴトだったんだが。警察のデンワに“テントウ虫”がついている以上…オレがハナシをするのはキケンすぎる」
『…私が行ってどうにかなるものなんだろうか?』
「だから。キミに任せるのが一番いいと思ってね。そこでどうするのかは…行ってみれば、わかるさ!」

シセルの疑問を残したまま。二人の“会話”はジョードの力強い言葉で締めくくられた。リンネ以上に大雑把で熱血な彼らしい会話だ。
もしシセルの声が聞こえていても。このやりとりは変わらなかったに違いない。

(そういえば。ジョード刑事に“ハコ”のことを伝えていないな…まあ、後でリンネ刑事にまかせればいいか)
今聞いた話の報告も、そのときでいいだろう……そんな事をシセルが考えている間、ジョードは電話で死者のために《道》を作っていた。

「ああ…キッチンチキンかな? 出前をたのみたいんだがね」
…やや迷惑な電話のかけ方だった。
『…ヤレヤレ…相変わらずのようだな、ジョード刑事も。では…行ってみるとしようか。“ラブリーな連絡先”に!』

もう一度、ゴミ箱のふたを返事代わりに鳴らし。シセルは見知らぬ電話線をたどっていった。




シセルがたどりついた先は。見知らぬ家の、廊下にある電話だった。

『ここは…どこだ…? …マッタク、本当に表札が欲しくなってくるな』
(まあ、あったトコロで私は読むことはできないのだが)

周囲に《コア》が見当たらないため電話から移動することもできない。
『これが“ラブリーな連絡先”…か。来てみたはいいが…どうしたものか』
やや途方にくれつつも、“死者の目”であたりを見回したとき。シセルは思わず息を呑んだ。

『…!』

廊下の先の、壁越しに見えたもの。それは《死者のコア》。
今日死んだリンネのほかに、《死者のコア》を持つ人間は……この《現在》では一人しかいない。


『……ヨミエル……!』


忘れるはずもない、その彼の名を。シセルは無意識に口にした。

〜次へ〜



1章へ2章へ3章へ4章へ5章へ最終章へ
TOPへメニューへ

2012.09.16