TOPへメニューへ


悪夢の続き 〜1〜

ドラゴン。
こいつらの激しいブレスに何度全滅しかけたかわからない。
それは時に魔族の唱える呪文よりも恐ろしい。
冒険者としての実力を十分身につけた今も、このモンスターの力は脅威だ。

「……今日は、スケイルベインがある」
だから……最初の息さえ凌げれば、後は全力で叩き潰せばいい。
『聖なる鎧』の加護で灼熱の炎に抵抗し、目の前の竜を斬りつける。
固い鱗を切り裂く手ごたえ。騎士は勝利を確信し、竜は断末魔を上げる。

「……いやあああああっ!!」

竜じゃない――人間の、女の悲鳴。
騎士がよく知る人間の。
「姉……さん」
倒れていく姉に手を伸ばす騎士。

だが、騎士の手が触れた彼女の身体は――



「―――っ!?」
身体がよろめいて、椅子から転げ落ちそうになるテオ。
リコルを寝かせてからずっとついていた彼だが、居眠りをしてしまっていたようだ。
「……なんつー夢を……」
安堵と同時に、深くため息をつく。
胸の奥に溜まった嫌なものも同時に吐き出すように。
しかし、夢の記憶は薄れてはくれなかった。
感触まではっきりと覚えている。

……俺の手の中で、姉さんは、灰になって、崩れて……っ!

最初の事件、操られた侍が目の前で崩れ落ちてから引きずっている不安、恐怖。
そして今日、侍と同じになった姉に襲撃された時に感じた戦慄。
黒い槍に剣を振るいつつ、最悪の状況を思い浮かべては振り払って、否定して、打ち消して……。
そうやって心の奥底に追いやったものが、一気に夢として現れたのだろう。
「でも、もう助かったんだ」
声に出して、今また恐怖を振り払う。
そして彼女を寝かせてあるベッドに振り向いて――

――いない。

「姉さん!?」
ベッドには起き上がった跡がある。
隣の部屋に通じる扉のノブに手をかけ、回す。
「ダメ! 来ないで!」
今日、何度聞いたかわからない拒絶の声。
チョウとか言う女に、黒い槍に操られていた時と同じ。
「姉さん、何が――!」

騎士が部屋に入った瞬間、何かがぶつかってきた。


【1】【2】【3】【4】

TOPへメニューへ

2008.03.11